信頼に足る大人


通勤途中、何故かふと中学生時代のことを思い出した。
それも、信頼するに足りない大人たちのことを。

それは学校の先生であったり、同級生の親御さんだったりしたけれど、大人になって思い返しても「今なら理解出来る」とは言う気になれなかった。


いくつかエピソードはあるけれど、思い出したついでにそのうちの一つを書いておこうと思う。


手前味噌だが、中学生の私は割と優等生だったように思う。
成績は、副教科を含めても5段階中ほぼ5、委員会や部活動もしていた。問題行動だって起こした事はなかったと思う。

ある日、放課後に高校の学校見学を予定しており、移動費や緊急時を考え、普段は持って行かない財布を持って登校した事があった。

そしてその日、運悪く学校内で盗難事件が起こった。
私を含め、数名の生徒が体育等で教室を空けていた隙に財布から金品を抜き取られていた。
私が盗まれたのは、確か2000円以下の現金と、数枚の図書券だった。

しばらくして、犯人は校内の人物である事が判明し、盗まれた金品は全て無事に回収された。
しかし、腹立たしいことに、犯人の名前が明かされることはなかった。当然、謝罪もない。

後に、被害にあった生徒は、盗難金品等返却との名目で、学年担当の教師に1人ずつ呼び出される事となった。

まず、学校に財布を持って来たことを叱責された。
それから、自分の財布にいくら入っていて、何が盗まれたのかを答えるように言われた。

正確に答えれた生徒はそう多くないと思う。私もその1人で、現金について、ざっくりとした金額しか答えられなかった。図書券についても2,3枚だったと思うが、言い切れる程自信を持っては答えられなかった。
仕方ない部分はあると思うが、正確に答えられなければ返せないという。

悔しかったが、現金については仕方ないような気もした。

ただ、図書券については思い入れがあり、なんとか返して欲しかった。
小学生の頃に通っていた珠算塾で、皆勤賞だった時に景品として貰えたもので、自分の力で手に入れたという思い入れがあったので、本当に欲しい本があった時に使おうと大切にとっていたものだった。

教師は、確かに盗品の中に図書館が数枚あったと言った。
言い振りからして、私の申告とそう乖離があるようにも思えなかった。

でも正確な枚数を言い当てないと返さないと言う。

私は、他に図書券を盗まれたと申告している人がいるのかと聞いた。いないと言う。


じゃあそれ、私のですよね?


食い下がる私に、財布を持って来たこと自体が悪いと高圧的な態度を取り、被害者側への寄り添う姿勢は感じられなかった。

犯人は名前を隠しているだけで判明しているのだから、犯人に1つの財布から盗ったのか、複数の財布から盗ったのか聞いてもらえばそれで分かるのではないかと言うと、まぁ今度聞いてみてからまたー云々かんぬんと言い、全く納得のいかない私をよそに、その場は終了させられた。



結局、図書券は返ってこなかった。


犯人からの聞き取りも本当にやったのかすら定かでない。
言ったことは守られず、適当にはぐらかされただけだった。



本当に悔しかった。
そして、失望した。


そもそも、窃盗は立派な犯罪である。それを些細な校内トラブルとして片付けて済まそうとする辺りが、既に穏便に済ませたい大人の事情が透けて見える。

この事件への対処の甘さが関係していたのかは定かでないが、校内ではその後も数度の盗難事件が起きた。
家族からもらったBurberryのマフラーを盗まれた子もいた。

どの事件も犯人の名前は明かされることはなかった。


この出来事だけが原因だったのではない。
所詮中学生と高をくくり、抑え込めば何とかなると生徒たちを甘く見ているであろう態度が普段から端々に見え、教師たちに対する信頼は失墜していった。

本業であるはずの勉強に関する質問も、後回しにされ、ついに答えてもらえなかった。GTOかぶれの自惚れ教師、授業中にかなり偏った政治的自論を力説した挙句、指導範囲をほとんど終えられない教師(しかも社会科の教師ではない)、弱小部にコンクール出場をけしかけて練習させておきながら、その出場日を失念していた教師。


中学生という多感な時期に、学校で質の良い教師に恵まれないのは、不運としか言いようがない。


救いなのは、通わせてもらっていた塾の講師に恵まれ、家族以外でも信頼にたる大人の姿を見せてもらったことだった。
もしそういう場がなかったとしたら、、、?


学業も大事だが、精神面でも支えになり得る大人の存在は大きいはずだ。

息子も成長していく中で、きっと色々な大人に出会うと思う。
まず身近な学校の先生に恵まれることを祈るが、不安にも恵まれなかった時は、他に彼の周りに支えになり得る信頼に足る大人の存在があるか、気に掛けてみたいと思う。

そして、自分自身省みて、信頼に足る大人であれるよう意識してしてみたいと思う。


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